中川 康弘ゼミ
Yasuhiro Nakagawa seminar
演習テーマ『社会的文脈でとらえる日本語教育学』
演習テーマ『社会的文脈でとらえる日本語教育学』
2024年度の国際交流基金調べで、海外の日本語学習者数は143の国・地域で400万人を超えました。また文化庁「国語に関する世論調査」では、ことばのゆれが報告される一方、「日本語が乱れている」と感じる日本人は減少傾向にあります。皆さんは外国人の日本語をどれだけ歓待できますか。「夜ごはん/ちがくない/エモい/~界隈」などを無意識に使っていませんか。勧誘・謝罪・愛情表現やLINEのスタンプに、言語的配慮の難しさを感じたことはないでしょうか。
日本語教育学は、国内外の学習者の様相、ことばの世代差、性差、地域差のインターアクションへの影響、アイデンティティの承認や権力といった政治性、さらには、言語の市場価値といった経済との関係も射程に入れた学問領域です。本ゼミでは、日常の日本語使用の実態と諸政策を検討し、日本語教育を社会的文脈でとらえていきます。 演習1では、指定文献を中心に輪読、ディスカッションを行いつつ、ゲスト講義や学外見学調査を実施しながら、日本語教育という学の全体像を把握します。演習2では、日本語教育学の各論に着目し、ことばの使用、ことばと教育、ことばと社会など、それぞれの興味に合わせて個人テーマを掘り下げていきます。 同時に調査の方法論も学びつつ、実態調査を試みます。調査では状況に応じて国内外の教育現場も訪れることも予定しています。そして演習3では、調査結果を踏まえて卒業論文を執筆していきます。
授業はゼミ生が用意したレジュメや調査結果についてディスカッションしながら進める双方向型を徹底して行います。そして、その過程において、“自分の日本語”をどこまでも探究していく姿勢が求められます。
ふだんづかいの日本語に対する感覚を磨き、日常場面でのことばの使用や教育、諸政策に広く目を向けることで、熟達した日本語使用者になることを目指します。それは日本語にかかる資格取得やプレゼン、論文作成等の日本語運用力の向上にとどまりません。私たちの社会活動の根本をなすことばを、種々のアングルからとらえることで、自己を見つめ、社会を見つめ、ひいてはさまざまな価値観、背景をもつ他者との共生の可能性を模索したいと思います。
ゼミ生同士、積極的にコミュニケーションをとって、お互いに学びを深めてください。各自の問題意識に柔軟かつ丁寧に対応し、一人ひとりに潜在的に宿る知的興味を大切に育てていきたいと思います。