平繁 佳織ゼミ
Kaori Hirashige seminar
演習テーマ『19世紀から21世紀のアイルランド文化研究』
演習テーマ『19世紀から21世紀のアイルランド文化研究』
文学を学ぶことは、歴史を学ぶことと切り離せません。特に、ヨーロッパの西の果てにあるアイルランドは、19世紀から21世紀にかけて大飢饉、英国の植民地支配からの独立戦争、北アイルランド紛争といった凄惨な出来事に次々と見舞われました。その折々に世に出たアイルランドの詩・小説・演劇・映画には、それぞれの作り手の考える「アイルランドらしさ」が提示されています。
作品が生み出された歴史的背景を理解し、同時にそれらの作品がどう歴史を捉え、語り、作り上げてきたか考えます。文学を単なるエンターテインメントではなく、その時代特有の産物として捉える視点を養うことが本ゼミの要となります。さらに、英語で論文を執筆することも本ゼミの大きな特徴です。
「演習1」(2年次)では、アイルランド近代史と文学史を概観し、一次文献の扱い方、文化批評の手順を学びます。ゼミ生の語学力によっては、英語によるアカデミック・ライティングの手法にも触れる予定です。
「演習2」(3年次)では、前期にアイルランドの小説を扱い、批評を読んで自分の論に組み入れる作業をすることで演習論文執筆の準備をします。後期には具体的な作品とテーマを決定し、演習論文の土台となるような短い論文を書きます。また、互いにコメントし合うことで、批判的な視点を養い、文章を校正する練習をします。
「演習3」(4年次)には、演習論文を英語で作成します。テーマは3年次に選んだものの延長線上にあることが望ましいと考えます。
文学(小説・詩・演劇・映画など)に関心のある学生にとってもらえればと思います。英日バイリンガルのゼミで、ゼミ生の語学力に合わせて使用言語の比重を変えていきます。英語で高度な文章を読めるようになりたい、英語で論文を書きたいという動機も歓迎しますが、ふだんからフィクションについて思考を巡らすのが好きなことが重要と考えます。作品解釈に正解はないので、一つの解答を追い求めたいというタイプの人には向いていません。様々な解釈が存在する中で、自分の立場を正確な表現で、論理的に、説得力をもって表明できるようになることを目指しましょう。
参考までに、今年の演習論文テーマには「ジェイムズ・ジョイス「死者たち」の自伝的解釈」、「映画Sing Streetと1980年代アイルランド経済」、「ジョン・ミリントン・シングと芥川龍之介の影響関係」、「小説とテーマ・パーク・アトラクションのアダプテーション論」などがあります。応募の時点でアイルランドの作品に精通している必要はありません。これを機に、自分はどのような作品に興味があるか考えてみてください。